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【長崎県|五島列島 若松島】大漁祈願!縁起物が高く宙を舞う、新しい船のお披露目

   色とりどりの大漁旗をはためかせ、島々を縫って1隻の新しい漁船が波を切って進んできます。目指すは長崎県五島列島の中央に位置する「若松島」の神部地区(こうべちく)。
   古くからの伝統である、新船が竣工した際の祝いごと「船祝い」の主役として港へ向かっているのです。一方港では地元住人がビニール袋を持ち、首を長くして待っています。果たして「船祝い」とはどんなイベントなのでしょうか。

(文&写真:ちゃんぽん)



 

 

1.世界遺産の教会と祈り、そして水産の島。五島列島

 

   長崎県が、全国で2番目に長い海岸線を持っていることはご存知でしょうか。その海岸線は、壱岐・対馬・五島列島をはじめとする大小さまざまな有人島・無人島によってつくられ、豊かな自然と、入り組んだ島々が織りなす荒々しい地形は、国立公園・国定公園に認定されています。



   中でも五島列島は、2018年7月に世界遺産に登録された「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の教会群を有する「教会と祈りの島」として知られています。
   一方、魚類の養殖も基幹産業のひとつであり、列島の中央に位置する若松島はぶり・ひらまさ・黒まぐろなどを育成する多くの養殖業者が拠点を構える水産の島なのです。なぜなら若松島の若松瀬戸は日本有数の急流と言われ、その美しい海と激流で育つ魚たちは運動量が豊富で身が引き締まる養殖に最適な環境だから。

   そして、その養殖の現場での活躍が期待されるのが、この度船出の時を迎えた冒頭の船。若松島の神部地区に拠点を置く「株式会社徳丸」が建造した「第三十三徳丸」です。配合飼料と呼ばれる養殖魚のための固形餌を散布する機械を搭載しており、給餌における効率化・自動化の役割を担っています。


若松島


 

 

2.漁船から100kgの縁起物が飛んでくる!?

 

   さて、お披露目の日を迎えた「第三十三徳丸」は「軍艦行進曲」が鳴り響く中、伝統に則って神部地区の港の湾内を3周したのち、住民が待つ港に着岸。新船のお披露目に集まった地域住民の笑顔に迎えられました。

   ところで、集まった住民の手にはビニール袋が。なぜだかわかりますか?…実はこの袋、船から投げられる餅を入れるためのものなのです。



   めでたい場でお餅を投げる行事を、わたしたちは「餅拾い」と呼んでいます。家の棟上げでは屋根の上から、新船の披露では船の上から。小さな紅白のお餅が小袋に入れられて、一斉に宙を舞って飛んでくる。それを「われ先に!」とみんなが手を伸ばしてキャッチする光景は、活気があって笑顔が絶えません。とにかく「餅拾い」はみんな大好きな、待望の一大イベントなのです。



   特に、一番初めに投げられる「四隅餅(よすみもち)」が飛んできたときの活気はすさまじいもの。ほかのお餅にくらべて格段に大きいサイズかつお金が入っているからです。数百個なげられる餅のうち、4つしかない貴重な縁起物は、みな喉から手が出るほど欲しいのでしょう。(ちなみに四角餅は5つ用意されており、一つは海の神様に奉納されます)

   今回「第三十三徳丸」は、この神部地区を含む計4か所で、紅白餅を地元住民にふるまいました。聞いたところによると、100kgの餅が宙に舞ったそうで、いかに大規模なイベントだったかがわかります。そしてどの地域も大勢の人が詰めかけ、小さな子どもからお年寄りまで楽しそうに餅を拾い集めていました。中には「いっぱい拾ったよ!!」と得意気にパンパンの袋を見せてくれるちびっこ、「私は足が悪いから遠慮しておこうかしら」と話していたにも関わらず、いざ本番では一番前を陣取って餅をかき集めるおばあちゃんの姿が!

   初めて餅拾いに参加したIターン出身の男性も、必死の形相で餅を拾う住民の姿に、「こんなに本気でするものなのか!」と目を丸くしていました。次回はたくさん取れるといいですね。



 

 

3.歓待ムード一色の漁村は、笑顔と笑い声に包まれて

 

 

   四方を海に囲まれた島だからこそ、水産業と密接なかかわりをもち、その海の恩恵に感謝している島民たち。その暮らしの一コマに、新たな住人を迎える船祝いが定着しているのも納得です。いつもは漁船のエンジン音と鳥たちのさえずりが響くだけの静かな集落に響き渡る歓声と軍艦行進曲が、普段落ち着き払ったこの島の日常に、元気と笑いを届けてくれました。

 

(文&写真:ちゃんぽん)

 

 

 

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