宮古島といえば夏のイメージ。スキューバダイビング、シュノーケリング、海水浴などの印象が強いですが、決してそれだけではありません。
宮古島は都市開発が急速には進んでおらず、古くからの建物や街並みも比較的現存しており、また遺跡なども数多く残されています。
そんな僕が、穴場スポットも含め宮古島の魅力をご紹介していきます。
宮古島は都市開発が急速には進んでおらず、古くからの建物や街並みも比較的現存しており、また遺跡なども数多く残されています。
僕は最近人生で初めて、スケジュールや宿を一切決めずに片道切符のみで出かける「旅」をしてみました。初めての「旅」先が宮古島で、結果、8日間、島を巡ることに。人と出会い、自然に触れ、文化を知るごとに宮古の魅力にどんどん引き込まれていきました。
そんな僕が、穴場スポットも含め宮古島の魅力をご紹介していきます。
今回は数ある史跡の中のひとつ、盛加井(ムイカガー)です。
(文&写真:片山正樹)
1.懇々と水を湛える神秘の井戸、盛加井(ムイカガー)とは
盛加井は「降り井(ウリガー)」と呼ばれる井戸です(宮古島では井戸のことを「井(ガー)」といいます)。降りていく井戸なので「降り井」と呼ばれるようですが、時代劇で出てくるような、桶と滑車を組み合わせた「つるべ井戸」とは全く異なります。大きな洞穴の底の方に湧水の場所があり、そこまで降りていって水を汲む、というものです。宮古島にはたくさんの井戸の遺跡がありますが、盛加井は島の中心地である平良地区でもっとも規模が大きな井戸です。
場所は宮古島の中心街にほど近く、繁華街である西里通りからでも歩いて10分ほどで着きます。
◎宮古島市平良地区にある盛加井◎
2.鬱蒼とした緑に覆われた盛加井(ムイカガー)を探検!
2-1.盛加井周辺と入り口
宮古島市平良地区にある盛加井の周辺はこんなところです。
周囲は普通の住宅街です。標識や看板もないので、自転車に乗って探していましたが思わず通り過ぎてしまいました。写真の左奥に見える木々のところが盛加井です。
道を入っていくと、住宅地の景色から一気に様子が変わります。小さな森のような場所が忽然と現れました。
進んでいくと入り口が見えてきました。両側には説明書きの石碑と鳥居があります。
入り口です。石垣と草木に覆われ、かなり狭いですね。
2-2.いざ、盛加井の中に潜入!
入り口をくぐり抜け、一歩踏み入れるとそこには異次元の世界が広がっていました。
シダやつる、その他様々な草木が一面を覆うように広がっています。古代にタイムスリップしたかと勘違いしそうな原始的な空間。それはまるで「天空の城ラピュタ」の世界のようです。
思わず息を呑みました。僕は本当に現代にいるのか?
奥の方には岩を積み重ねたのかと思いましたが、違いました。すべてつながっています。壁一面が地層です。
地層の上層にあるわずかな土の上にも草木が根を張っています。
少しらせん状になった石段を降りていくとどんどん薄暗くなっていきます。石段を降りきった暗がりの中で目をこらすと湧水の場所がありました。左右に2ヶ所、いずれも畳2畳分もないくらいです。水はとても澄んでいて、今でも十分に飲めそうな感じでした。
下から見上げた石段。真ん中あたりは少しすり減っています。人々が毎日のように水を汲みに通った痕跡だそうです。昔の暮らしの苦労が偲ばれます。
盛加井の横にある御嶽。鳥居には「盛加井御嶽」とあります。御嶽とは神が祀られている聖なる場所です。
入り口を出て、反対側の道に出てみました。こちらには看板がありました。中心街からはもう一方の側の道の方が近いのでそちらにも看板を立てていただけるとありがたいなとも思うのですが、そんな「隙のある感じ」もまた、宮古島の魅力のひとつです。
3.盛加井の成り立ち
まるで異世界に迷い込んだような不思議な空間、盛加井がどうやって出来たのか調べてみました。
3-1.盛加井はこうしてできた
宮古島の地質には様々な層があります。そのうち、琉球石灰岩でできた地層は水に溶けやすく、雨水などで浸食されて地中に空洞ができます。長い時間を経て浸食が進むとやがて地表が崩れて窪地ができます。
この窪地のことを「陥没ドリーネ」といいます。窪地の底の方には水を通さない地層があり、そこにろ過された水が溜まります。
宮古島にはこうした地形を利用して作られた井戸が各地に見られます。盛加井もそうした井戸のひとつで、陥没ドリーネの特徴がよく分かります。
盛加井がいつ頃どのように作られ、どのような人々が利用したのかは定かではないようです。入り口横の石碑の説明書きによれば、一説には14世紀後半に勢力をふるった与那覇原一族の本拠地がこのあたりにあったとも言われているそうです。
3-2.なぜ井戸が重要なのか
宮古島には山がないため川がなく、水源は地下水に求めるしかありませんでした。生活に欠かせない水の確保は死活問題です。人々は数少ない水源を見つけては、毎日のように水を汲み、生活をしていたのですね。なんと、戦後もしばらくの間、上水道が普及する昭和30年代頃までは生活用水として各地の井戸が使われていたようです。「命の水」として水を大切にする宮古島の人々の痕跡を、盛加井に垣間見ました。
まとめ
以上、盛加井についてご紹介しましたが、現場には文や写真だけではお伝えし切れない「迫力」があります。市街地の中に忽然と現れる「異次元の世界」に、思わず息を呑むような感覚をぜひとも体感して頂きたいスポットです。
宮古島の面白さは夏のマリンレジャーだけではありません。冬でも、いや、冬だからこそより楽しめる、魅力的な遺跡やビュースポット、ツアー、グルメがたくさんあります(なにより暑くなくて動きやすいです)。冬場は航空チケットも安いですし観光客も夏ほど多くなく、宿やレストランの予約も取りやすいです。機会がありましたらぜひ訪れてみて下さい。
(文&写真:片山正樹)
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